第6章 アファドの坑道

 

「私のランプに移りたまえ」

 フューリーが鞄からランプを取りだして、ギザラの指に灯っている炎に呼びかけると、炎はまるで喜ぶかのように、光芒をめらめらと揺らして、ぴょん、とフューリーのランプの中に入っていった。

 そしてそれをそのままギザラに手渡す。

「持っていきたまえ」

「ちっ……」

 ギザラはしぶしぶ受け取る。

「なんだか、おれが嫌われているみてぇじゃねぇかよ」

「……」

 フューリーはかすかに微笑むだけで、その質問には答えなかった。

 暗い坑道の行軍が始まる。

 ジーナたちは、まず肩や髪についた雪を払い落とす。そうして一息つくと、体をほぐして、出発の準備を整えた。

「フューリー」

「なんだ」

 おそるおそる、ジーナが彼女の名前を呼ぶと、フューリーはこちらに顔を向ける。

「ずっとあいまいなままで、尋ねるのが怖いことがあったんだけど……」

「なんだ? 言ってくれ」

「……龍がいるって、本当なの?」

 ジーナはずっと心に秘めていたことを、ここで口に出した。

「龍か」

 フューリーはそう反復しただけで、なにも解答しない。

 そのことがさらにジーナの恐怖心を煽り立てた。

「この上に、さらに危険が待ってるってのか?」

 パリスがやや怒ったように声を上げた。

「安心しろ。金髪。おれがこの坑道を通ったときには、龍なんかにゃ一度も会わなかった」

「本当……?」

 ジーナはおそるおそる確認を取ってみる。

「おう。本当よ」

 ギザラは胸を叩いて、笑った。信用できそうだった。

「だが――」

 しかし次の言葉で、一行のかすかな希望は、また元の暗闇へと落とされてしまった。

「この坑道にゃ、『なんか』いる。おれは昔からずっとその気配を下に感じていた。おれたちが生まれるよりもずっと前から生きている『なにか』がな。そういうのがいてもおかしくはねぇぜ」

 ジーナは途中で耳を塞いでしまった。

 龍。

 書物の中だけでしか存在を知らないが、たとえ、魅惑的な伝承の象徴でも、ジーナはこの「龍」にだけは直接会いたくなかった。

 英雄は古代の叙事詩で古龍を一匹打ち倒し、その口の中から一本の名剣を手に入れたというが(カルズニール伝説)、自分にまさか同じようなことができるとは思いたくないし、また同じような運命が訪れてほしくもなかった。その「龍」という存在だけは、その他どの古代からやってくる魅惑的な伝承を容認しようとも、ジーナは、たったそれだけは、否認しておきたかったのだ。

 それほどおそろしい生物だった。

「ま、詳しいことはわからねぇがな」

 ギザラはそういって、言葉を終えた。

「さっさと行こうぜ。おれは、オークたちが壁の一枚向こうに突っ立っている状況で、べらべら世間話していられるほど楽天家じゃないんだ」

 ギザラはランプを肩の位置にまで掲げ、その闇の洞窟を、すた、すた、と静かな足音を立てて進んでいった。

 このアファドの坑道は、大昔にドワーフの一族が作ったもので、この月がけ山脈の付近に住んでいたドワーフの王国の宮殿と呼べるものだった。

 これは坑道などではなかったのだ。それは、大昔にドワーフが去っていってしまったあとにつけられた名称で、おもにそれはロザンクトの反対側、イセンザラールの地方の人々がつけた名だった。

 死の都市。

 これは「坑道」であるとも同時に、「古代の遺跡」でもあったのだ。

 迷路のように入り組んでいるこの遺跡は、案内人や、山脈の付近に長年住んだことがあるものなしでは、迷って命を落とすこと必至。現に鉱山として使われたのも、イセンザラール側のほんの小さな一部分だけで、ほかの大部分は、手つかずに遺されたまま、朽ちるに任されてあった。

 ギザラはしばらく長い階段をのぼった後、薄く青色に発光する綺麗な、一本道の廊下を進み、それから、あらゆる方向に道が伸びた、分かれ道を迷いなくいくつか通り過ぎ、やがて狭く、ほこりでぼやけた匂いのする、小さな一室へとやって来た。

「ここでおれたちゃぁ、いつも休憩を取ってた」

「それは許されんぞ」

「わかってる。けど、休憩を取りたくなる場所なんだよ。これを見てみな」

「なに? ……っ」

 ギザラは、その小部屋に安置されている石机から、ドワーフの字で、びっしりとページが埋まっている、半分朽ちた古い書物を見せた。

 この部屋は明るく――なぜ明るいかというと、部屋の奥に採光窓があって、そこから外の(といっても遙かに遠い)光がうっすらと漏れてきているためだった――ランプを手元に置いて本を注視する必要はなく、そのまま本を読むことができた。各自の顔もぼんやりとだが、わりとよく視認できるほどだった。

「これは?」

「おそらくここで生活していたやつの手記だ。ちっとは勉強しときな。ここは昔ドワーフ――おれたちはダイトの民と呼ぶが、ここはおまえらに合わせてドワーフと呼ぼう――その、王国だったんだからな。今じゃ、もう誰も住んでなくて、水の滴り落ちる音と、なんだかよくわからねぇ生き物の声しか聞こえねぇが」

「怖がらせないでよっ」

 ジーナが小声でさけぶ。ギザラは牙を見せてにやりと笑っていた。

 そんなやり取りを傍目に、フューリーはその朽ちた書物を持ち上げ、指でその文字を追いながら、小さな声でとぎれとぎれに読んだ。

「わレ……ここニぺんヲおきタリ。いまとなってハ、ここハもウ、アンゼンでハない……。とろる、おそっテきた。ここまでニげた。……かくしんアリ。いのチがないこと。ゆうジん、ふぃれ・アーむスは、とろるに……」

 フューリーが手に取ったのは、古いドワーフの手記だった。風化が進行して、ところどころが剥げていたり、乾燥しすぎてぱりぱりと崩れてしまっている。

 フューリーは、この手記の作者が、この坑道の終焉を知る者なのか、あるいは、ただの探検家であり、坑道が滅びてからここに訪れた者なのか、判じかねていた。

「どういうわけだ……」

「面白いだろ? こりゃ、おそらくドワーフの手記だろうが、おれは――ひそかにドワーフを騙った人間、それもマントヴァの野郎じゃねぇかとも思っている。ほら、その証拠に、ここ」

「なに? ……うっ」

 フューリーはギザラの指差した暗がりに目を凝らし、膝を屈めると、即座に顔を引き締め、口を手で押さえた。

「どうしたの? ……って、きゃっ!」

 ジーナもそれにつられてかがみ込んでみたが、直後、即座に飛び退く。

「は、白骨……」

 ベルは呟いた。

 それは、骨になった人間の死体だった。

 表面はうすく黄ばんでいて、土色となっており、その身体には、鎖かたびらや剣、足長のブーツなどが身につけられていた。

「人間の大きさだ……」

「そのとおり」

 ギザラはいう。

「どうしてこのアファドの坑道に人間がいたのか。それがわからねぇ。この手記には、おそらくこいつが死ぬまでのことが書かれていた。しかしどこのどのページを見ても、ドワーフの王国らしき様相は見つからねぇ。おそらくこいつは歴史家かなんかで、坑道の研究を進めていたやつの一人なんだろう。それが、洒落に乗じて、ドワーフ語の日記なんてものも書いたんだ。まぁ、最後は悲運に遭って死んだみたいだけどな……」

 だれもそれに答えるものはいなかった。

 衝撃と、ただ遠い過去への悲しみに、口が重く閉ざされ、その耳だけが、よくギザラの太い声をくみ取っていた。

「結局、おれが知りたくて、それでどうしてもわからなかったことはな、」

 ギザラは神妙な顔でいった。

「この王国がどのように作られて、どのように滅亡していったか、ってことさ」

「ギザラ……」

「こいつも、それを知りたかったのかもな」

 ギザラは槍を腕に抱きながら、崩れた壁に背中を預け、その死体を憐れみの眼差しで見つめた。

 一行はここで休むことはせず、さらに、そこからまた足を進めた。

 一行は長い迷路のような道をただただギザラに従って歩いていく。時折小さな採光窓が見え、その位置や角度によって、ギザラは大体場所を特定しながら確実に進んでいるようだった。

 階段をのぼり、そして、降りる。それを何度も繰り返す。

 カーブの道を回ったり、ジグザグの道を歩いたりする。

 それから数時間が過ぎると、一行は、天井の高い、かなり広大な空間へと出た。

「だいぶ来たな」

 ジーナは、ゆっくり深呼吸をする。

 ここの空気は、他のどこよりも澄んでおり、また、おいしかった。

「だいぶ来たというが、私たちはどれくらい進んできたのだ」

「ざっと三分の一弱ってとこだろう。ほら、あそこに見えるだろ。あの採光窓」

「え?」

 ジーナはギザラに指差されて、とても高い天井の奥を見上げた。

 声がこだましている。

 採光窓は、天井に直接つけられていて、そこには大きいものがいくつもあり、その窓から夕焼けの赤い輝きが、地面に、空中に飛散する黄金の粒子を通して、柔らかな光を投げかけていた。

 それがために今の時刻は夕方だと知れた。

「晴れていてよかったな。今は夕刻だ。さらにおれたちはだいぶ階段を登ってきた。降りた分も多くあったが、数えてみると登った数のほうが圧倒的に多かった。するってーと、おれたちは今かなり標高の高い位置にいるってことだ。天井に開いた採光窓の多さからも、おれたちは山頂に近いところにいるというのがわかる」

「なるほど……」

 フューリーは息をひそめて、感嘆していた。

「このようにして、位置を特定していくのか」

「他にどんな進み方があると思ったんだい? まさか、地図があるとでも?」

「いや……、」

 フューリーはうすく笑い、目を閉じる。

「君のやり方がとても理に適っていたので、これは勉強になる、と素直に思ったまでだ」

 ギザラはなにも言わなかった。ただ、照れたように鼻をツンとさせていた。

 その日は、その広い空間の、隅に作られてある狭い小部屋で、夜を明かすこととなった。

 

 ジーナはこの薄ら寒い空間で、寝付くことがどうしてもできず、薄目を開けて、ただなにも無い暗闇をじっと見つめていた。

 フューリーが、ここから離れた扉のところで、一人で見張りをしている。その細くて寂しい背中が目に入った。

 ジーナは毛布を抱えて、フューリーに近づいていった。

 だいぶまだ距離があるところで、フューリーに簡単に気取られたらしく、彼女は振り返って、ジーナの姿を認める。

「寝られないか」

「……うん」

「身体に響く。寝ておけ」

 ジーナはすり足でフューリーに近寄っていくと、自分から毛布を外し、ぼすっ、とその彼女の体に被せてやる。

「それは、アフェーナ、あなたも一緒でしょう?」

 そうして自分も一緒にそれにくるまる。

 フューリーは呆れた顔をしていた。

「なんてことをするんだ」

「えへへ」

「まったく」

 フューリーはそう減らず口を叩きながらも、ふっと長い寂寞から解放されたかのように、顔に生気をいくらか取り戻した。

「私の場合は、短い間でちゃんと休息を取っているから大丈夫だよ」

「そうかしら。本当?」

「ああ。本当だとも」

 ジーナは形式上、納得せざるを得なかったが、実は、フューリーが一睡もしていないことをよく知っていた。

「すこしくらい横になってもいいのよ」

「無用だ。私はこれでいい」

「嘘よ」

「本当だとも」

 フューリーは聞き分けのない子どもをあやすようにして、優しく微笑んだ。子ども同士のような興のないやり取りだが、フューリーは決して機嫌を損ねることがなかった。言葉を重ねるごとに、優しさが増していき、目に健やかな輝きがともってきた。

 フューリーはそこで言葉を切ると、目先の広大な暗闇を見すえ、フゥ、と小さく溜息をついた。

 フューリーは小声で歌い出した。

 それは、ジーナが今まで耳にしたことのある、街の有名な歌手などとは比べものにならないほど上手であった。いや、上手という陳腐な言葉でいい表せるものではなく、その声は耳にとても優しく、風の流れにひっそりと溶け込むようで、それでいてその混ざった大気が、光を受けて宝石のように輝き渡り、自分たちがいるこの空間が、一瞬にして幻想郷、エルフの里に早変わりしてしまったかのようだった。

 歌われている歌詞も、ジーナが聞いたことあるような言葉とはまったく違う、しかしよく耳に残り、心をときめかせるほどの、美しいものだとわかった。聞いたことがないのに、それは美しい言葉だとわかるような不思議な感覚は、ジーナにとって初めてであった。

「私は歌が好きでね」

 フューリーは歌うのを止め、遠くのどこかの風景を見すえつつそういった。

「眠らなくても、こうして歌を口ずさむだけで、いい気持ちになって、疲れがいえるのだよ」

 今度は、ジーナにもそれは本当のことだと感じた。

 嘘をいってなどいない。ましてや冗談でも。

 本当にフューリーは「そう」なのだと、実感した。

「どこの国の言葉なの? 聞いたことがなかったわ」

「聞いたことはあるまい」

 フューリーは笑う。

「私の国の言葉だもの。ずっとここから遠く、田舎で、君の国などには名前も知られておるまい」

「ええ? でも、嘘よ。だってあなたの国とファルサリアとは、方角も地域も一緒じゃない」

「む。そうだったな」

 フューリーはジーナに指摘されても、まだ笑っている。

「それでも遠い田舎なのだよ」

「……いったいどこの国なのかしら」

「君にその国を見たことはあるまい」

 フューリーはまた、かすかな声で歌い始めた。

 かなしげな青春の曲で、恋する者への熱い想いと、その後に続く、恋される者の寂しさ、罪悪意識が歌われていた。

 ジーナにはなぜか意味がわかった。どうしてわかるのか、それがわからなくても。

 フューリーはそれを歌い終えると、しばらくなにもいわなかった。

「アフェーナって、とても綺麗な声しているのね」

「私の国の者はたいていそうだよ」

「そうなの?」

「ああ。けれど……人前で歌うことは禁じられていたな。だから私は、暗い部屋の中でずっと一人で歌っていたと覚えている」

「それは、国の人たちみんなが、そうだったのかしら?」

 フューリーはほほえむ。ほほえむだけで、なにもいわなかった。

「ねぇ、アフェーナ」

 ジーナは、すこし重要な質問をしてみたくなった。

「どうしてアフェーナは、その国を出てきてしまったのかしら? 今は北の国の人間の王様のところに仕えているんでしょう?」

「……」

 フューリーは答えなかった。悲しげな笑みを浮かべて、広間の暗闇をじっと見つめている。

「……まだ、言うことはできない」

「そう。だったら、いつかは戻れるときがあるの? それだけ教えてくれないかしら」

 後ろでギザラの耳がそばだつ気配がした。あるいは、それはただの幻聴で、ジーナが頭の中でギザラを意識しただけだったかもしれないが。

「わからない」

 フューリーはそう答えた。

「私の意思で……、いや、意思だけで、その国を出てきたわけじゃないからな。私はもうその国には戻れないと思う。戻れるとしても、戻るまい。もう私の心は、エル・ギルドのハルバラ様の下にある。あの方を裏切って、故郷には帰れぬ……」

「でも、必要があったら、戻ることはできるんじゃないかしら」

「必要? 必要だと?」

 フューリーは怪訝そうに顔をしかめた。

「そう。たとえば、そのハルバラ様の命令で、そのエルフの里に赴けって言われるとか、あるいは、なんらかの必要に迫られて、その里に行かなくちゃいけなくなるとか……」

「まさか」

 フューリーは鼻で笑った。

「そんなはずはあるまい。あの国に、私が赴く用事など……」

 そこでフューリーははっ、とした。

 愕然とした表情でジーナに振り返る。

「……、ジーナ」

「ねぇ、アフェーナ」

 ぺろ、といたずらっ子がするように、小さく舌を出す。

 それでもジーナの顔に浮かんでいたのは、微笑み。

「いつか帰れるといいわね。故郷」

「……」

「そのときはね、私も連れていってね。あと、ギザラさんも一緒に行きたいっていってたよ」

「……ふ」

 フューリーはまた鼻で笑った。

「私は、エルフなどではないよ」

「そう見えないわ。確かに」

「君も知っているだろう。エルフには高い背と、とがった美しい耳がある。私にはそのどちらも無い」

「そう」

「そうだとも。……」

 フューリーはそれから、独りごちた。

「そうだ……」

 それは遠い青春のころを思い出す眼差しだった。

「私はエルフなどではない。エルフではなかったのだから。……それとも、人間か? いいや、人間でもなかった。私はエルフでも、人間でも、どちらの種族でもなかった……どうしたら、私は……」

 そのかすかな呟きは、闇に溶けて消えて、ジーナにも聞き取りづらいぐらいであった。

「もうやめよう」

 ジーナは、フューリーの見えない涙を、手でぬぐってあげた。

「また、歌聞かせてくれる?」

「……いいよ」

 フューリーはやや濡れた声で、うなずく。

 うたを歌う。

 かすかな音色となって、空間内にこだましていった。

 それは敵をおびき寄せる印ではなく、敵を追い払う聖なる印のように思えた。

 気がつくとジーナも一緒に歌っていた。二度聞いただけなのに、もうそらで歌詞を覚えてしまった。

「ジーナ」

 フューリーはこちらを見て、ちょっと驚いたようにしてから、静かにほほえむ。

「えへへ」

「ジーナ」

 フューリーはもう一度それを繰り返した。

「あなたが、必ず幸せに生きられますように」

 ジーナはそれに答えた。

「あなたもよ。アフェーナ」

「それはわからぬ」

 フューリーは悲しげな顔になって目を細め、それから閉じた。

「死ぬかもしれない」

「死なないわ」

「わからない。明日、私は生きているかどうかわからない。誰にわかるのだろう」

「わかるわ」

 ジーナはなおもそうつづけた。

「あなたが、私を生かすのであれば、私もあなたを生かすから」

 ジーナは小さく、けれども強い意志をもって、そう答え、フューリーの白くて冷たい手をにぎった。

「そう約束しましょう」

 

 夜が明けた。

 夜が明けても、坑道内は依然として薄暗いままだったのだが、採光窓から明るく白い光が漏れていたのと、見張りをしていた時間を計算して、今は早朝なのだと知ることができた。

 その日もまたしばらく歩いた。

 ジーナたちが昨晩休んだ広間よりもずっと大きな広間に出たり、永遠に続くのだろうかと思われる長い階段を登ったり、あるいは、それとは逆に、深淵のそのまた深淵に降りていくんじゃないかと思われる、途方もない下り階段を降りていったり、さまざまな道を歩いた。

 ギザラはそれらの困難な道を、迷いもなく、怖じ気づくことなく、淡々とした足取りで歩いていった。一行の間には会話が少なく、全員の身を疲労が包んでいた。

 そうであっても当然だ。休憩らしい休憩もほとんどなく、つねに背後に気を配ったり、その不安のために早足で歩いたり、今自分たちが全体でどの位置にいるのか、つねに考えながら歩かねばならなかったから。

 そして、その日二度目の休憩が与えられたときだった。時刻は夕方だった。

「ねぇ、」

 ジーナは唐突に口を開いた。

「なにか、聞こえないかしら……?」

「?」

 フューリーは不思議そうな顔をした。そうして魔法を使って、遠くへ耳をすます。

 そうすると、かすかに耳の奥に聞こえてきた、どーん、どーん、となにかの叩かれる音。

「聞こえるな」

「龍の足音じゃねぇのか」

「もしそうだとしても、ここからずっと遠くだな。ジーナ、よく聞こえたな」

「なんだか……聞こえたのよね」

 ジーナはなんだか嫌な予感がして、あらかじめ、この前フューリーに教わった耳の聞こえが良くなる魔法をかけていたのだ。

「これって本当に龍の足音なのかしら」

「わからぬ。この坑道には、得体の知れない生物がたくさんいるといわれている。ずっと地下に、だろうが」

「そのとおりだ。だから、会うことはきっとねぇと思うぜ。遠くで龍が散歩していらっしゃる、その残響音くれぇに思ってりゃいいんじゃねぇか」

「そんな簡単な」

 ベルが苦笑する。しかし実際に、笑い事ではないのは正しかった。パリスは難しい顔をして口を閉ざしている。

 こうして疲労の身の上、さらに龍などに出くわしたりなどしたら……。待っているのは悪い夢でしかない。

 しかしその夢の可能性を、ギザラは再三否定するのだった。

「だから心配すんなって。おれは龍なんかに会ったことがねぇって何度もいってんだろ」

「そうね……」

「だが今の状態ならどうだ?」

 フューリーは意見をはさむ。

「今のフィス(自然のこと)は落ち着きがない。おそらくかの、名前を口に出すのをはばかられる者が、力をつけてきるためだ。ここに来るまでの間、木はずっと落ち着きを無くしていたし、今も空気がぴりぴりしている。私は感じるのだ。そのような気配が」

「フューリー……」

「ほう? それで?」

 ギザラは尋ね返す。

「警戒を切らしてはならぬ」

 フューリーは厳しい顔で答えた。

「もしかしたら龍も気が変わって、こちら側の上層部に出現するかもしれぬ。そのときはどうする? 出口はここから近いのか」

「まだだいぶ先だぜ。今日中には抜けられねぇな。明日、早ければ日が変わるまえに抜け出せるかもな」

「そうか」

 フューリーはそれで黙ってしまった。

 今日中に出会わぬことを願うほかない。ジーナは、パリスがそう小声で呟いたのを、かすかに聞いた。

 行軍はそこからさらに、夜が更けてくるまでなお行なわれた。

 ジーナはかすかな食料と、少量の水を取り、夜は死んだように眠った。

 疲労の極みにあった。そしてフューリーに回復の魔法をかけてもらいつつ、無理をして進んだ。

 見張りは、今回はパリスとギザラが交替でつとめた。なにか二人で話し合っているようだった。

 そんな会話をジーナは夢の中で聴いた。

 

 その翌日。

一行はさらに、この薄暗く、青白い神妙な煌めきにつつまれるおぼろげな坑道内を進んだ。

 そこかしこの空間に、古のドワーフ王国の名残を見つけることができた。たとえば挙げると、広間の柱は妙なる彫刻が彫ってあったし、朽ちかけた絨毯の上には歴代の王が、戦において勇猛果敢に戦っている模様が見られた。

 鍜治場の跡もいくつも見つけることができた。

 ギザラの話では、ここの鉱脈からは多数の金銀が取れたという。一時はその財力で莫大な勢力を有したが、逆にその繁栄による進化を速めすぎてしまった点に、この王国の滅亡の原因があったのではないかと推測している。かれは、こういうことを話すときだけは、学者のようであった。

 ジーナは、フューリーから極めて簡単な回復魔法を教えてもらい、自分で常にかけ続けながら、進んだ。しかし空腹だけはどうしようもなかった。非常食のカスッチャを細かく砕いて、三粒くらい口に入れて、それで食事は終わりだった。ただ、旅の暮らしが長くなるにつれ、そのような苛酷な環境にも、しだいに身体の組織が慣れてきたようにジーナは自分で感じられた。体を動かし、敵を最低限迎え撃つ、そして逃げ出すだけなら、とりあえずこれで十分だった。敵を倒しにいくためには、それ以上のしっかりした食事が必要だろうが。

 そのような中で唯一フューリーだけは疲れ知らずであった。エルフというのは疲れてもほんのすこしまどろんだり、立ったまま瞑想にふけるだけで、たったほんの短い時間で、疲労を回復させることができるのだという。ギザラがこっそり教えてくれた。

 フューリーの場合は歌だったのだろうか。もっとも、フューリーは、自分がまだエルフだと認めていなかったが。

 そうして、その一日もだいぶ過ぎ、茜色の光が採光窓から差し出したころ。

「ちょっと待って」

 再びジーナが一行を呼び止める。

 みんなは疲れた顔で振り返った。

「どうしたんですかい? ジーナ様」

「幻聴じゃないわ……。何度も聞いたもの。きっとこれ……龍の足音なんかじゃないわ。ずっと聞こえているのよ。どーん、どーん、ってなにかが叩かれている音」

「それは私の耳にも聞こえた。……どうだ? 君たち。ここですこし考えてみないか。その音の正体を。なぜなら」

「ずっと大きくなってきているからよ」

 ジーナはフューリーの言葉を引き継いで、彼女の視線と目を合わせて、うんと頷いた。

 パリスは腕を組んでいった。

「ずっと大きくなってるだって? そりゃあ、まさか……」

「近づいてきている、ってことじゃねぇか?」

「うひゃ……」

 ベルが、恐怖に身を竦め、頭を抱えてうつむいてしまう。

 ギザラが声の張りを強くして答えた。

「だったらなおさらここでのろのろなんかしてらんねぇ。まさか、一応おれらは上層部を通っているから、龍の巣に近づいていってるわけがねぇんだが……。嬢ちゃん、あんたは竜の足音じゃねぇ、っていうんだな?」

「そうよ」

 ジーナは腰元の「シュフラストゥ」が輝くのを感じた。

 理智の力を与えてくれる。

「どうして私たちは龍の足音だなんて思ったのかしら? 聞いたこともないのに? これは……よく私たちが聞いたことのある音よ。何度も聞いたことがある。これは、ひょっとして太鼓の音じゃないかしら。どーん、どーん、って、すこし破裂するような感覚があるわ。これはきっと、太鼓よ。それから、なにか振動しているような揺れる気配がするわ。大勢の虫がわらわらと蠢動しているような、そんな、おそろしく不吉な気配……。一つじゃないわ。もっと数多くいるわよ。これって、もしかしたら……」

「もしかしたら……。もう、その言葉の先は聞きたくないな」

 フューリーは顔をしかめ、首を横に振ってみた。

「私にもよく聞こえる。みんな、耳を澄ましてみろ。聞こえないか」

「聞こえますだ……」

「おいおい、こりゃあ……」

「私たちのよく知っている足音よ」

「もしかして、またオークかよ!」

 パリスがそう叫んだ。もう今の状況では、魔法を使わなくても、はっきりと、遠くのほうにかすかに、足音や叫び声、とりわけ、太鼓の音が聞こえるのだった。

「これってとんでもない数じゃないかしら!」

 ジーナが叫ぶ。

「確かに」

フューリーが強張った顔でうなずいた。

「おそらく、先日のオーク隊ではなく、この坑道の地下に住んでいる別のオークたちが呼び寄せられたな。あるいは、私たちの知らない、オークたち専用の別の抜け道があるのか……」

「どっちのオークも来た、って解するのがきっと正解だろうぜ!」

 ちっ! と忌々しげにギザラは舌打ちをつく。

「おれにもよく聞こえる。こいつは……今までにないくれぇ数多くの部隊だ。どうしてだ? チューザーは一国の将軍にすぎないぞ! そんなにあいつを困らせるのが好きか!」

「教えよう」

 フューリーは、今までジーナに語っていなかったことを、ここで新たに口にした。

「チューザーはラストバルトの作戦で多くのオークの族長たちを殺している。とても屈強で、残忍な族長たちをだ。多くの恨みを買っているのは間違いない。それに……」

「それに……なに?」

 フューリーはジーナの目を見つめた。

「ラストバルトでは、チューザーは、もしかしたら次の王になれるかもしれないと言われているほどの英雄なのだ。血筋が卑賤なため、それはできないが。だが古代の王というのは、えてして彼のように血の純度を高めていったもの。今のうちに叩いておこうという敵の計略は理解できる。真実、われらエル・ギルドでさえ、今のうちに彼と友好関係を結んでおきたいと考えているほどだからな」

「……」

 ジーナは息が詰まる思いがした。自分の兄がそんな名誉を……。

 ジーナは、おぼろげな記憶の、チューザーの表情を思い出す。

 チューザーはなんでもできる天才だった。ヴィンフィールト家の家名に恥じない貴公子ぶりを見せていた。さらにそれだけでは飽きたらず、大学では革命家じみた発言を残していた。

 ジーナは母セレニアの遅い子どもであったため、とくにみんなから可愛がられたが、兄と父の間には、相当熾烈な、そして難しい確執があったのだという。父はかれの息子の秀才っぷりに危惧を持った。かれの強さと聡明さのために、誰よりもきつく当たった。そのために彼は家を出てしまったのではないかと、ジーナは考えていた。

 そしてそのおかげで、今まさにチューザーは王の器として認められている。知らないうちに。そしてそのために、自らや自らの娘にまで危険がやって来た。ジーナは悲しかった。

 ただ、悲しい、と思った。

「お兄様……」

「だが、みんな、」

 しかしフューリーは誰よりも冷静でいてくれた。

「今はなぜ、どうして、などの因果論を話している場合ではない。我らが取る道と、これからもし敵と出会った場合の、対処法を検討するべきだ」

「逃げる」

 ギザラがはっきりと答えた。

「これっきゃねぇぜ。まともにやりあってられねぇ。幸いに、もう出口はだいぶ近くなってきている。このまま休み無く走り続ければ、おそらく日が変わる前にゃ出口につける」

「そこで敵が待ち伏せているという可能性は?」

「……ちっ!」

 そこでギザラは頭を抱えた。

「大いにあるな……。向こうで別部隊が張ってるかもしれねぇ」

「可能性の話だがな」

「おうよ。そのとおりだ。おれたちは罠と知ってても進むしかねぇ。ここで立ち止まったらそれこそ敵の思う壺だ。それにもし出口が近いならば、蹴散らしながら進むことができる」

「どっちみち、戦いの準備が必要になるってことだな……」

 パリスは決意を固めた顔で、もうすっかり傷がなおった腕を、持ち上げて、ぐるんぐるんと回してみせた。

「もう戦えます。もうこの前みてぇなへまはしません。お嬢様、今度はおれ一人で戦わせてください。オークの野郎とも渡り合ってみせます」

「パリス……」

 ジーナはかれを見直した表情で見つめた。

「ばか者。そんな暇はない。逃げるのが先だ」

「だが、そんな暇までなかったらどうする? おれたちが確実に逃げきるために、だれかが後衛に当たらなきゃならねぇんじゃ?」

「君がその役目を務めるというのか」

「はっ、」

 パリスは冗談っぽく肩をすくめる。

「できれば御免被りたいがね。だが、人手が足りないならおれが行くしかないようだな」

「いいや、」

 だがそこでフューリーは首を横に振るのだった。

「私が後衛に残ろう。君は私を犠牲にしてもよい人だ。直接ジーナの護衛に当たらなければならないからな」

「フューリーッ!」

 ジーナは世界が暗転した思いだった。びっくりしてフューリーの名を呼びかける。

「ジーナ」

 だがフューリーはここで微笑みを向ける。

「これは仮の話をしているのだ。仮に、もし切羽詰まった状況になった場合……誰を最優先に生かすべきかを決めておかなければならない。この場合、最優先は言うまでもなくきみだ」

「……っ」

「そうしてもっとも最後尾に留まるべき者は、私と、ギザラになるだろう。どっちみち私は君を守るのが役目になるのだからな」

「だったら最後まで私を守ってよっ!」

 ジーナは精一杯声を上げて叫ぶ。涙が目の端に滲んできていた。

「それはできぬ」

 きびしい声でフューリーはそれを否定した。

「なぜならそれは、『守る』ことではないからだ。誰かを犠牲にして自分だけ生き残るのは、『逃げる』ということであって、『守る』のではない。私の名誉に傷がつく」

 フューリーは厳然とした睨みを、ジーナに向け、それから、今ではかなり近くなってきている太鼓の音がするほうへ向けた。

「さぁ、逃げよう。私の剣は敵を倒すためにあるが、今はそうでないと誓おう。あなたを守るためにあるのだと。私はそのために剣を振るうと誓う! さぁ、そのために、まずは逃げるのだ!」

 ギザラはランプを高くかざし、フューリーがその隣に厳然と立った。

 足をいっそう速くし、一行はさらに坑道を奥へと突き進んでいった。

 

 息が切れる。

 喉がからからに乾いている上に、さらに砂をその上からかけられたみたいに、喉が干からびていた。水を飲む隙はほとんどなかった。どんどん近づいているのだ。先ほどの足音が。きっと自分たちの匂いを嗅いでいるのだろう。石畳を踏破する音は低くこだまするように反響し、オークの鎧のこすり合う音も、同時に耳にこびりついていた。

 フューリーは唯一疲労の重力から免れているため、ギザラと並行して走っていた。そのあとをジーナ、パリス、ベルと続いている。長い長いトンネルを走っている。風がかすかに前方から流れてきている。出口は近い。

「意外と近いぜ。おれたち、かなり速く進んでたな」

「もうあちら側の山についているということか?」

 フューリーがやや息を切らせながら横を向いて言った。

「多分な。このまま行きゃぁ、逃げ切れるかもしんねぇぜ。……ちっ、この槍を振るってやる機会がねぇってのはなぁ! 残念でならねぇぜ! 可愛いお豚ちゃんがよ!」

「ラストバルトに着いたら貴様の仕事は腐るほど残っているだろう。チューザーの部隊で散々こきつかってもらえ。それとも私と一緒に来るかね?」

「そんときゃ、そんとき考えるぜ! 返事は待ってな!」

 ギザラとフューリーはまだ軽口をたたき合えるほどの余裕があったが、ジーナたちはもうへとへとで、ほとんど息が上がっており、その会話に混ざる余裕もなかった。息をぜぃぜぃと切らしつつ、ただ前へ、前へと足を動かす。

 そうしてやがて、トンネルが切れて光がやって来た!

「っしゃぁ!」

 今までにないほどの大広間。

 その場へと五人は飛び出る。

 人間が三人分くらいの、ものすごく太い鉄の柱がつづく柱廊だった。そこの遺跡の中央廊下を、一行はひたひたひた、と一行は石畳に足をすりつけて進んでいく。

 オークたちの咆哮が同じ広間に響き渡った。ジーナは身が竦む。びりびりと肌が振動して、心臓の鼓動がどくどくと速くなってきた。

「走れ! はやくっ!」

 フューリーは先方で足を止めて、ぐいっ、ぐいっ、とジーナたちに、速く走るように指示をした。

「急ぐのだ! オークたちはもうそこまで来ているぞ!」

「わっ、わかってる、……わよ!」

 息を切らしながらジーナは答える。

 足がもつれ、手は空を切り、まるで壊れた操り人形のように、じたばたとみっともなく走る。ギザラは一人で先頭を突っ走り、先の道の安全を確かめに行っていた。

「あそこだっ!」

 ギザラは遠くの暗闇で叫んだ。

 ギザラが立ち止まっているところの隣に、一行がぜいぜいと息を切らしながらたどり着くと、その面前には、大きな鉄でできた門扉があった。

 門の前の階段に、左右にわかれてかがり火が二つほど焚いてあって、門はその明かりに照らされて、赤茶色に明るく染まっていた。しかし一分の隙もなく閉じてしまっている。ギザラはそのまま躊躇することなく、その門とこちら側の間に開いている、奈落への底をかけている木造の橋に、躍りかかった。

 ジーナたちも一緒に進もうとした。

 しかし、

「ガァァァ――――――ッ!」

 オークの咆哮がすぐ後ろで響き渡った。

 ジーナは総毛立って、後ろを振り返る。

 そこには、いた。

 数多くのオークの群れ。

 この前遭遇した灰色の「バルナグス」ではない、赤茶けた、荒野の色をしたオーク。口からは牙がはみ出て、反対側の唇の上にまで到達している。鉄の、馬のしゃれこうべのような不気味な兜を被り、鼻からは濃い障気を吐き出していた。

 そんな地底のオークたちが、武器を持って、見渡せる限り数十匹も、そこに群がっていた。

いた。

「ジーナ!」

 フューリーの叫び声がする。

 フューリーが橋の中央で立ち止まり、振り返って、ハイゼルフェルトを抜きはなったのだ。

 翡翠色の美しい輝きが、オークたちの勢いを退ける。

「こいつらは私が相手をする! その間に君はあの門をくぐれ!」

 キン、キン、キン――、とハイゼルフェルトの輝きが強くなっていく。

「そんなっ! 危険よ! 今こんな場所で戦ったら!」

 今ジーナたちがいるのは橋の上だった。下は奈落まで一直線といっても過言ではないほどの、暗闇だった。

「ばかもの!」

 フューリーはジーナの顔を振り返って、大声で怒鳴る。

「そんなことはどうでもいいのだ! 君が逃げるのが先だ!」

「いやよっ! 私も一緒に戦うわ!」

「だめだ! はやく逃げるんだ!」

「おい、なにちんたらちんたらやってんだ! あほ、はやくしねぇと――」

 ぐずぐずしていたのを見咎めたギザラが、大声で叫びながら戻ってくる。

 そのとき、だった。

 橋がぐらぐらと揺れ、端で留められていた麻のロープが千切れ始め、橋が崩れだした。

「な、なにっ!?」

 フューリーは体勢を崩す。橋の切れ端を手で掴もうとするが、それもやがてぼろぼろと崩れ落ち、無くなっていく。空に消えていく。オークたちはちょうど運よく、橋の末端の、断崖に手をかけて難を逃れていた。

 しかし中心にいたジーナたちは――、

「ひっ、ひゃぁぁぁ――――!?」

「くっ――!?」

 橋が千切れたことで、

「んな、馬鹿な! ――」

 全員、奈落の底へと落ちてしまったのだった。

 

 つづく……

 

 

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